[日本心理学会第88回大会] 大会企画シンポジウム
[IS-001]
[新刊連動講座]心理ネットワークアプローチ入門
行動科学者と社会科学者のためのガイド
2024年9月6日(金) 11:30-13:10
第1会場(2F シビックホール)
企画代表者:株式会社勁草書房
話題提供者:樫原 潤1、小杉 考司2
司会者:永田 悠一3
(1. 東洋大学、2. 専修大学、3. 株式会社勁草書房編集部)
心理ネットワークアプローチは,人間の心を一種の複雑系とみなし,複雑な心を統計分析の結果に基づいて理解・予測・制御しようとするものである。臨床心理学における「心理療法のテーラーメイド化」という文脈のなかで10数年前に提唱されたこのアプローチは,その後飛躍的な発展を遂げ,いまではパーソナリティ研究や社会心理学の態度研究など,心理学の幅広い文脈で活用されるに至っている。この心理ネットワークアプローチについてはNetwork Psychometrics with Rという体系的なテキストが2022年に出版されており,2024年にはその日本語翻訳版として『心理ネットワークアプローチ入門』が出版されることとなった。本企画では,『心理ネットワークアプローチ入門』の監訳者である樫原と小杉が講演者となり,アプローチがもつ価値と日本語版テキストの魅力を解説していく。
企画の構成は,以下のように計画している。まず,心理ネットワークアプローチを導入することで,どのようなものの見方やデータ分析手法がもたらされるのか,研究の実例を交えて解説する。具体的には,心理学で扱う構成概念(例:うつ病)を「多様なコンポーネント(例:うつの個別症状)の相互作用によって維持されるネットワーク」として捉え直すことができ,ネットワーク構造全体や個々のコンポーネントがもつ特徴について数量データ解析に基づいた議論が可能になるということを示す。次に,監訳者2名の専門性を生かし,心理療法への応用と複雑系科学(システム論)との接続性というそれぞれの観点から,心理ネットワークアプローチの発展可能性と今後の課題について議論していく。最後に,監訳者2名が考える『心理ネットワークアプローチ入門』という書籍の見どころについて,トーク形式で掘り下げていく。これらの講演を通して,心理ネットワークアプローチそのものがもつ革新性や面白さを伝えるとともに,初学者がゼロから学べるように工夫がこらされた書籍の魅力を伝えていきたい。
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